意味が分からなかったが、包みを開けるとのし紙に「就任十周年御祝」と書いてあった。
完全に意味不明。
社員やうちの役員どころか僕自身も、僕が今の会社の代表にいつなったかなんて正確に知らないし覚えていない。
多分十年目位だろうってね。
送り主はちょうど十年前に最後に会ったかな。
同じソリューションを愛して頑張っていた同業者の社員の年下の男だった。個性的だったけど本当にこのビジネスと愛していたと思う。
当時、僕が今の会社の代表になると聞いた彼は、確か都内の会議の後だったかな、お祝いにってシャンパンを持ってきてくれて新宿のおでん屋で飲んだんだよね。2時間くらいかな。
「お互い頑張ろう。」って握手して駅で別れてあずさに乗った。その後、彼はいろんな事情でその会社を辞め、会う事もなくなり、せいぜい年賀状のやり取りくらいの関係だったのに。いまどんな仕事をしてるかも知らない。
驚きどころか、本当に意味が分からなかった。
なにより驚いたのが、のし紙に自分のいた会社ではなく、僕らのソリューションの名前が書いてあったの。
十年前に、たった一つのエージェントのたった一人の社員だったのにね。
「ア○○ル OB」ってね。ちなみにアスマルじゃないよ。(笑)
僕は携帯を手にとり、送り状に書いてある見慣れない市外局番の電話番号に電話をした。
感じのいい女性が電話に出て、僕が自分の名前を告げると昔からの知人のように、「お世話になっています。主人にかわります。」と。
奥様なんてもちろん会った事もない。
本人と十年ぶりに話した。
僕がお礼を言うと彼は「おでん屋、覚えてます?」って。
もちろん覚えている。
僕は「こんな時代だし、ソリューションも変化してきて、あのころとは違うんですよ。」と少し愚痴ると彼は。
「いつもサイトとかで拝見しています。勇気もらってますよ。10年間でスタッフの皆さんやお客様を幸せにしてきているのは、遠くにいてもわかりますよ。そんなこと言っててはダメですよ。立場を考えて下さいね。僕なんか今は裏方の裏方みたいな仕事をしていますよ。」
みたいなことを言われた。
なんか、覚えていてくれていたどころか、応援してくれてて、10年ぶりなのに、誰も覚えていない以前に僕も忘れている10年目を覚えていてくれて、驚きとともに、自分はそんなこと出来ないから、なんか、凄く泣けてきた。
「仕事も音楽もいいけど、そろそろペース配分して、ご自分のしてきた事を考えて、今夜くらいは十周年を祝わないとダメですよ。」って言われた。
確かに走り続けてきた10年だった。
彼がこのビジネスを離れてもずっと好きなのもわかるし、離れるのも辛かっただろうね。今もこのビジネスを好きなのに離れることを選ぶ友人が何人かいる。
今週、ちょうど10年前に広告代理店に就職して僕の会社の担当になった若者が都内から突然来たの。
新卒で広告の営業でうちに来たのに、亡くなったばかりの彼の父親の話を聞いたり、人生の話したり。
その彼は「その時が忘れられないし、会えて良かった。」って言ってくれたの。
彼もめちゃくちゃ苦労してるけど活躍してるよ。
ダメだなぁ、自分は。と感じて泣ける夜でした。
ビジネスパートナーも友人もスタッフも異性も、愛しているからこそ、がっかりしたり、許せなかったり、けど結局許せたり、また頑張ったり。そうやって生きてると思ったけど、会えなくても、携われなくても、遠くにいても、忘れない事とか心の片隅にあるってことも、凄いなと思った。10年かぁ。
その一方で、好きとか、真面目とか、誠実とか、等身大とかがかっこわるいって馬鹿にする奴、本当に多いけどね。
結局、僕は何をしてきたんだろう。僕には出来ない事ばかりだ。
僕はまだまだだな。ありがとう。
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